Schwarzman Scholars合格者インタビュー:佐々木彩乃さん 〜彩乃さんや選考について〜
【北京大学大学院燕京学堂 日本向け説明会のお知らせ(2023/9/9(土)21:00-22:00)】
(記事のはじまり)
中国の清華大学大学院にあるSchwarzman Scholars(シュワルツマンスカラーズ)。21世紀の新しい政治経済状況に対応できる次世代のグローバルリーダーの育成を目的として設立された全額奨学金修士プログラムで、毎年世界中から超優秀な学生を北京に集めています。
今回そんなプログラムに、日本人の佐々木彩乃さんが合格しました!すごい!
彩乃さんは2020年9月からSchwarzman Scholarとして北京に留学し、1年間でGlobal Affairsの修士号を取ることになります。
そこで!!この記事では彩乃さんのバックグラウンドやSchwarzman Scholarsの選考などについてインタビューしていきます!まだまだSchwarzman Scholarsに関する日本語情報が少ない中、これから応募を考えている方々の参考になれば良いなと思っています。
ちなみに、私はSchwarzman Scholarsの”ライバルプログラム”とされる北京大学Yenching Academy(イェンチンアカデミー)出身ですが、どちらもすばらしくておすすめしたいプログラムなので、この記事を書いています。あ、あと彩乃とは合格前からの友人です(笑)。
<インタビュー内容>
- 経歴
- 志望理由
- 興味分野/問題意識
- 取り組みたいこと/目標
- 選考スケジュール
- 応募書類と面接の準備
- リーダーシップ経験(Leadership Essay)について
- 推薦状について
- ビデオ(optionalな応募書類)について
- 面接について
- 応募したい人へのアドバイス
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1. Kazuki:まず、彩乃さんの経歴を教えてください。
1. 彩乃:私は九州大学法学部の卒業生です。九大在学時には、香港のBai Xian Asia Instituteという財団の奨学生として香港大学社会科学部に1年間留学しました。また、以下のような様々な課外活動に取り組み、九州大学総長賞を受賞しました。ただ、大学までは海外経験がありませんでしたよ!
- 第70回日米学生会議副実行委員長
- JENESYS外務省/韓国外交部 訪韓団にて学生団長
- VIA program (アメリカのNPO)でのインターン
- アメリカ大使館のTOMODACHI MetLife Women’s Leadership Program
- One Young World 2019 in London
- 他にはニューヨークやマカオで開催された国際会議に学生代表で参加したことなど
2. Kazuki:個人的な感想ですが、さすが経歴はすごくSchwarzmanぽいなと感じますね(笑)。アメリカや香港など”西側”での経験、活発な課外活動とすばらしい実績、リーダーシップ経験など、Schwarzman にはそのような学生が多い印象です。
次に、彩乃さんがSchwarzman Scholarsに行きたいと思った理由について教えてください。
2. 彩乃:私がこのように様々なことに取り組んできたのは、海外に将来活躍の場所を求めるのであればまずその勝負する場所と人を知らなくてはいけない、と焦っていた部分があったからです。
でも、その一方将来自分の国に対して何かを還元したいという思いから日本を軸にした国際関係に興味を持ちました。最初に興味を持ったのは日韓関係、そして日米関係。私にとって両国は日本に色んな意味で近い国でした。しかし、両国によく足を運ぶようになる中で、「中国」という国の理解なしに今後の国際社会の理解はないと思うようになり、香港に留学しました。ただ、香港も中国本土とは違うので、今度は内地へ…という思いからシュワルツマンスカラーズに応募しました。
また、現実的なことを付け加えると、全額奨学金付きであることが魅力的でした(これまでの留学は全て奨学金でサポートしてもらってきていました)。通常中国の大学の修士号には高い中国語のレベルが求められますが、シュワルツマンに関しては英語で可能だという点も重要でした。
もちろん、世界中から集まってくる人間が本当に素晴らしい人ばかりなので(多くの人は職務経験もある…尊敬でしかない)彼らから、そして環境から学べることも多いと考えています。
3. Kazuki:「「中国」という国の理解なしに今後の国際社会の理解はない」という点は、私もすごく同感です(Schwarzman Scholarsの創始者・Stephen A. Schwarzmanも同じようなことを言っていますね)。中国を好き嫌いで語る人は多いですが、中国という国のあらゆる側面での影響力を考えると、好き嫌い関係なしに中国に対する理解を深めることはとても重要だと思います。
また、Schwarzman Scholarsに奨学金等のサポートが充実していることや世界中からすばらしい同級生が集まっていることも確かですね。私もSchwarzmanの人たちと多少交流がありますが、すごい人がいっぱいいますね(笑)。
そもそも彩乃さんは、特にどのようなことに興味があり、どのようなことに問題意識を持っているんですか?
3. 彩乃:興味範囲はかなり多岐にわたり自分でも困っていますが、特に東アジアにおける協調をいかに図っていくのかということに関しては興味があります。
また、学問的にというわけではないですが教育やテクノロジーの社会実装にも興味があります。(そういう意味では近未来感がある中国は私にとっては最高の場所です!)
4. Kazuki:東アジアにおける協調を考える上では中国を学ぶことは大事ですね。また、中国ではエドテックがとても発達していて、テクノロジーもおもしろいスタートアップなどがあります。ちなみに、北京大学と清華大学のすぐ近くには、中国ソフトウェアのシリコンバレーと呼ばれる「中関村/Zhongguancun」があります。
彩乃さんはそのような興味を持つ中で、何か目標はありますか?Schwarzman Scholarsの先にどんなことに貢献したり、取り組んでいきたいと思っていますか?
4. 彩乃:東アジアにおける強力な経済/文化面での連携を生み出すことに強い関心があります。現在その第一歩として、かずきさんとも知り合うきっかけになったBai Xian Asia Instituteの仲間、かおりとTHE LEADS ASIAというメディアを立ち上げて東アジアのユースを繋ぐ活動を行っています。
個人的には言語や文化も含め日中韓を受容、理解できる基盤を今後自分の中に構築し、3か国の連携を図る際に橋渡し的役割を担える人間になりたいと考えます。そのためにも、常に謙虚な心と好奇心を持ち、実践の中で学ぶことを続けていきます。
更に、日本国内で言えば進路指導やキャリア教育に対して関心があります。
2つの理由からです。1つ目は日本の社会に蔓延する無力感に対して抵抗したいから(笑)昨年、日本財団が出した統計結果で衝撃的なものがありました。
「日本社会の将来は良くなると思う18歳―10%未満」
えっ!と驚くと同時に「わかる~」という感覚に襲われました(笑)
でも何だか悲しくないですか?日本の未来良くなるって思わないまま、日本に住み続けるのって。ということで、若者がこの社会に対して感じる停滞感や無力感をどう解消しつつ一緒に将来に対して希望を持てる社会づくりをしていくのか、考え始めました。その手段としての教育、です。
2つ目は後悔の再生産をしたくないからです。私自身、東京や大阪という大都市に暮らした経験が無く、どちらかというと田んぼや海、山に囲まれて生きてきました(笑)大学に入るまで自分の将来の選択肢に「海外」は皆無。圧倒的に狭い世界で生きてきました。
だから大学に入ってから色々な苦労をしたわけですが、その過程で「実は高校時代にこんなチャンスがあったんだ」みたいなものに幾度となく遭遇しました。早い段階から広い視野で世界を見る事、それができなくとも「知ってはいる」状況を作っておくことが次の行動に必ず繋がると思います。自分や友人の後悔の再生産をしないで済むように常に次の世代のことを考えていたい。その手段が教育です。
現在MIRACT(ミラクト)という教育NPOを立ち上げ代表を務めています。教育には生涯をかけて向き合いたいです。
5. Kazuki:次に、Schwarzman Scholarsの応募書類や面接について聞いていきます。
まず、応募から合格までの大体のスケジュールを教えてください。
5. 彩乃:出願自体は8月でしたが、一次合否は10月ごろ頂きました。そこから早い人は2週間以内に面接がスタートして、11月上旬で全員面接終了。そこから2週間強くらいで結果が来たと思います。
6. Kazuki:応募書類や面接はどのように準備していましたか?
6. 彩乃:出願書類は取り敢えず6月ごろからダウンロードして眺めていました。何を書こうか考える程度でも毎日眺めていると日常から使える題材が出てきたりするのでおススメです。
面接は、ノートを一冊作って、される可能性がある質問をリストアップして回答作成をしていました(実際書いていたことはそこまで聞かれなかったが)。自分で練習するのと他人に見てもらうのは全然違うので、私は良くして頂いている教授に練習をお付き合いいただきました。また、シュワルツマンスカラーズが公開している動画の中に恐らく面接に関わる物があった気がします。繰り返し見て、イメトレしてました(笑)
7. Kazuki:Schwarzman Scholarsの応募書類の一つ・リーダーシップ経験に関するエッセイ(Leadership Essay) について何かアドバイスがあれば教えてください。
7. 彩乃:世界中から本当にすごいリーダー経験を持った人間たちのエッセイの中に自分のアプリケーションがあることを意識するべきだと思います。約5000のアプリケーションの中で記憶に残る一枚にするためには、やはり「自分にしか書けない」「リーダーシップ経験」というものを熟考するべきです。
人は皆、自分の人生に対してリーダーシップを取る必要があります。よく「リーダー経験が無いからシュワルツマンには応募できない」という相談を受けますが自分に対するリーダー経験がない人はいないと私は思っています。自己マネージメントもチームマネージメントも、基本は同じです。そのことから考えると、「自分にはリーダー経験がない、だから応募できない、エッセイを書けない」というようなことは無いと思います。
シュワルツマンのエッセイに求められているのは輝かしい経験の羅列では無く、どんなに小さなリーダー経験であっても、そこから何を学び、いかに自分の思想まで昇華させられているか、という部分にあるように思えます。
自分にとってのリーダーシップとは何なのか。どのようなリーダー像を理想とし、自分は今何に取り組み実践しているのか。そして自分の描くリーダー像はどのような社会を実現するために必要なのか。しっかりじっくり考える必要があると思います。他の人のエッセイを読むことは大事ですが、型を学ぶ程度にとどめ、その後は自分自身に向き合って書く方が良いかな、と個人的には考えています。
こんなに偉そうに話していますが、私は提出日前日にどうしても自分のエッセイに納得できず、1から全部徹夜で書き直しました。
ですが、それまでの数か月間ずっとエッセイのことを頭のどこかに置きながら暮らしていたので、数時間でバーッとかきあげて、締め切りぎりぎりで提出しました。(後から読み直すと色々ミスがあり相当焦りましたが)
ちなみに、私は経験から学んだ「私にとって理想」のリーダーに不可欠な要素について書きました。
8. Kazuki:推薦状はどのような人にもらいましたか?
8. 彩乃:留学先の香港大学にて受講した中国に関する授業で良くしていただいたアメリカ人の教授、中国の企業の方、自分の大学の指導教員(学部長)に書いてもらいました。色んなバランスはあると思いますが、私も多様性、自分の専門との関わりを考えた結果このようになりました。
9. Kazuki:Schwarzman Scholarsの応募書類に入っているビデオ(optional)について、何かアドバイスがあれば教えてください。
9. 彩乃:応募要項にどんなスカラーを求めているか書かれていますよね。普通に読み飛ばす人もいるかもしれませんが私は一つ一つの言葉を分析して自分なりの意味付けを持ったうえで、そのシュワルツマンスカラーズが求めている人間であるということを証明するチャンスが動画だと思っています。
1分の使い方は自由なので、どうやって、記憶に残るか、そして「この子シュワルツマンに合う!」と思ってもらえるか考えました。ですが、いつも締め切りギリギリな私はシュワルツマンの応募も例外ではなく、結局30分以内に完璧なものを撮らなきゃいけない、という追い込まれた状況で撮影したので、実際共有できるアドバイスはそこまでありません…。
10. Kazuki:Schwarzman Scholarsでは、書類選考を通ると海外の面接会場に直接呼ばれると聞きましたが、面接の実態はどんな感じなんでしょうか?
10. 彩乃:面接は年度によって変わりますがロンドン・ニューヨーク・バンコクで行われます(インターナショナル生の場合)。私はバンコクで受けるべき日程の時にロンドンで、ロンドンの日程の時にマカオで予定があったためにオンラインかニューヨークしか選択肢が無く、ニューヨークを選択しました。交通費、宿泊費、食費、全てシュワルツマンスカラーズが出してくれたので金銭面の心配はいりませんでした。ですが、1次の結果が出ると2週間以内に海外で面接、となるので実際私のようにスケジュール調整が難しい場合もあるようです。
ニューヨークには2泊3日で滞在しました。その中で、面接は半日で終わるので空いた時間に面接会場で知り合った候補者と出かけたり、ニューヨークに住む友人たちと会ったりしました。
11. Kazuki:最後に、これから応募しようと思う人たちへ何かアドバイスをお願いします。
11. 彩乃:実際、振り返ってみると私は3年生の頃から戦略的にシュワルツマンへの出願を考えていました。応募を検討している方の参考になるかもしれないので私が行っていたことを共有させていただきます。
私は、合格者紹介ページがシュワルツマンには存在するので、そのページを読み、どのような人が求められているのか分析したり、私をシュワルツマンが採用するならば140名のスカラーの多様性を考慮する中でどのポジションになり得るか考えました(ダイバーシティの問題で金融に興味ある人ばかり、男性ばかり、アジア人ばかり等は起きえないと分かっていたので)。一旦、自分は「このポジションでスカラーになれそうだ」と見当がつけば、後は自分がそのポジションに最適合することを証明する要素を過去の経験から洗い出す、又は応募までの期間で創り出します。それと同時にエッセイでは自分が設定した「このポジション」がいかにシュワルツマンスカラーズにとって重要であるのか、必要なのかという説得を織り交ぜていく必要があると思います。
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今回彩乃さんの協力のおかげで初めてScharzman Scholars日本人合格者のインタビューを作成することができました。ありがとう。
Schwarzman Scholarsはすばらしいプログラムにも関わらず日本ではまだあまり知られていないので、もっと多くの人に知ってもらいたいなと思っています。そして、彩乃さんが教えてくれた貴重な情報をもとに、これから彩乃さんに続く人たちが増えていくことを願っています!!(私が所属する北京大学のYenching Academyにも増えてほしい!!)
ちなみに、彩乃さんが紹介してくれた情報は本当に貴重だし、選考などに関する考え方や取り組み方はとても重要なので本当に参考にしてほしいです。私自身もYenching Academyに応募したときは彩乃さんがアドバイスしたようなことの多くをしていました。
では、興味のある方々はぜひ挑戦してみてください〜!
あ、受かったらインタビューさせてください(笑)
<参考記事>