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【完全ガイド2024】現役日本人学生が北京大学Yenching Academyへの応募を徹底解説します〜必要事項と対策〜

Yenching Scholarになるには...?

この記事に関するメモ:

この記事は北京大学大学院燕京学堂(Yenching Academy)に所属する現役の日本人学生が、2024年9月に、元々あった同様の記事の内容を全面的に見直して更新した最新版です。元々の記事の執筆者であるKazuki(Yenching Academyの卒業生&本ブログの運営者)が書いたわけではないのですが、このブログに記事を掲載させてもらっています。Yenching Academyに関する日本語の情報は全然ないですし、最新版の情報も載っているので、以下の内容はすごく参考になるかと思います!興味のある方はぜひチェックしてみてください!

※元々の記事(2018年版)↓

kazukiearth.hatenadiary.jp

 

(本文はここから)

この記事では、中国で英語を用いて修士が取れる全額奨学金プログラム=北京大学燕京学堂(Yenching Academy=イェンチン・アカデミー)の応募についてまとめています。応募に必要な情報(資格要件や応募書類)や応募に関するアドバイスを書いてあるので、Yenching Academyへの応募を考えている人はぜひ参考にしてみてください。「4. 各応募書類作成に関するアドバイス」は海外の他の大学や院などに応募しようとしている人にも多少は参考になるかと思います。

*Yenching Academyに2025年9月に入学するための応募締切は2024年12月1日13:00(日本時間)です!!

 

★Yenching Academyがどのようなプログラムなのかについてはこちらを見てみてください:

kazukiearth.hatenadiary.jp

 

北京大学Yenching Academyホームページ:

yenchingacademy.pku.edu.cn

 

★Yenching Scholarの実際の経験がどんなものか気になる人は次をどうぞ:

kazukiearth.hatenadiary.jp

 

kazukiearth.hatenadiary.jp

 

1. 応募に必要な資格

美しい北京に最高のプログラムで行くためには...

まず応募に際して、絶対に満たしていなければならない条件は以下の二つです。

  1. 学位(学部卒以上=専攻はなんでもいい) *まだ学部を卒業していなくても応募できるが、入学する年の8月31日までに学位を取得できる必要あり
  2. 英語能力(英語が母語でない場合はIELTSかTOEFL IBTかCambridgeかCEFRのスコアの提出が必須。最低でも、IELTS: 7.0点以上、TOEFL IBT: 100点以上、Cambridge: 180点以上、CEFR: C1以上、TEM4: "良好"かそれ以上のレベルをパス、CET6: Overall 600点以上などのスコアがないと応募できない)

*IELTSとTOEFL、Cambridgeのスコアに関しては、Yenching Academyにスコアが直接送付されるものしか受け付けられないので、試験を申し込む際にスコアの送付先として"Yenching Academy of Peking Univesity"を指定しなければならない。TOEFLの場合、Institution codeはC488。

*英語で行われる学位プログラムを修了している場合はスコアの提出が免除される

上記の資格要件を満たした上で、以下の3つの「資格要件」も必要とされています。しかし、絶対に必要な上述の学位と英語能力とは異なり、以下の三つは資格要件というよりはただの応募に際して期待される能力です。

  1. 優秀な学業成績(Minimum GPA=足切りラインは設定されていない)
  2. 中国に関する学際的研究への強い興味関心
  3. 以下の項目を示す経験:特筆すべき課外活動、コミュニティへの貢献、社会的な活動、リーダーシップ・ポテンシャル

また、応募に際して年齢制限はありませんが、一般的には28歳より上の者を採用することは少ないとされています(*)。ただし、実際にはそれよりも上の入学者もいますし、28歳より上だからといって選考に通らないということは必ずしもありませんので、応募してみたいという気持ちがある方は年齢にかかわらず挑戦してみるとよいと思います。

*HPでは、年齢制限に関して“The Yenching Academy does not have a strict age cut-off for applicants, but in general, no person over the age of 28 has been admitted to the program. The average age of students entering the program is 23.” と公式に回答されています。上記のように実際には28歳以上の方も入学されているので、あくまで一つの目安と考えるとよいでしょう。
https://yenchingacademy.pku.edu.cn/ADMISSIONS/Frequently_Asked_Questions.htm

 

2. 応募に必要な書類

Yenching Academyのホームページに載っている応募書類は以下の通りです。これらの書類を英語で作成し、オンライン応募システムで提出することで応募が完了できます。

  1. Personal Statement (志望動機書: 750字以内)
  2. Statement of Research Interest (研究関心表明書: 1500単語以下)
  3. Curriculum Vitae (履歴書)
  4. Official transcript(s) (成績証明書: 原本が英語あるいは中国語でない場合は、原本のコピーと正式な英語への翻訳版を提出)
  5. Two letters of recommendation (推薦書: 2通)
  6. Diploma(s) or Certificate(s) of Enrollment (学位記あるいは在籍証明書: 原本が英語あるいは中国語でない場合は、原本のコピーと正式な英語への翻訳版を提出)
  7. International English proficiency test score (英語試験のスコア: 応募にはIELTS: 7.0点以上、TOEFL IBT: 100点以上、Cambridge: 180点以上、CEFR: C1、TEM4: "良好"かそれ以上のレベルをパス、CET6: Overall 600点以上が必要) *IELTSとTOEFL、Cambridgeのスコアに関しては、Yenching Academyにスコアが直接送付されるものしか受け付けられないので、試験を申し込む際にスコアの送付先として"Yenching Academy of Peking Univesity"を指定しなければならない。TOEFLの場合、Institution codeはC488。*英語で行われる学位プログラムを修了している場合はスコアの提出が免除される

これらの応募書類に加え、Yenching Academyのパートナー大学出身者(在学生と卒業生)は、Yenching Academyのウェブサイトで応募することに加え、出身大学で行われる学内選考にも応募することが求められています。今のところ、日本でYenching Academyのパートナー大学となっているのは、早稲田大学京都大学のみです。早稲田大学京都大学出身者で、それぞれの学内選考を通った人は、Yenching Academyへの応募に対して大学自体から推薦書がもらえます。例えば、早稲田大学の学生が早稲田の学内選考に通過した場合は、自ら用意する2通の推薦書に加えて早稲田大学がYenching Academyに対して直接推薦書を提出するという感じになります。したがって、学内選考通過者は結果として推薦書が3通になります。これは、Yenching Academyが奨学生の選考に際してパートナー大学からの推薦を考慮したいということでやっているようですが、学内選考の通過と出身大学からの推薦書は、その候補者がYenching Academyにも合格するということを意味するものではありません(もちろん、ないよりはあったほうが良いとは思いますが)。実際、Yenching Academyには、パートナー大学以外からも非常に多くの多様な学生が集まっています。また、日本の場合を見ても、これまでに早稲田大学京都大学の学生だけではなく、パートナー大学ではない東京大学国際基督教大学慶應大学などの学生も合格しています。なので、出身大学からの推薦書は「あったらラッキー」くらいに考えておけば大丈夫だと思います。また、もしもパートナー大学の出身者が学内選考に通過しなかったとしても、他のほとんどの人と同じように普通にYenching Academyのオンライン応募システムで応募することができます。パートナー大学の概要とリストは、次のリンク先にあります: http://yenchingacademy.org/partners

それぞれの応募書類を作成するにあたり、ヒントになるかなーと思ったことは「4. 各応募書類作成に関するアドバイス」にまとめてあります。

 

3. 応募に際して期待あるいは要求される力

この項目は、ほぼわたしの予測ですが、Yenching Academyでは必ずしもみんながみんな指導者としてのグローバルリーダーになっていくことが求められている訳ではなく、むしろ中国と世界への理解を深めつつそれぞれに適した立場から政治、経済、社会、科学など様々な分野で大きく活躍するグローバルリーダーとなっていくことが期待されていると思います。そんなYenching Academyへの応募者に特に要求されることは、「1. 応募に必要な資格」でも書いたように、以下の五つだと思われます。この五つのうち、1つ目と2つ目の学士学位と英語能力は必須条件で、それ以外は期待される条件という形になります。5つまとめて、ホームページでは「資格要件: Qualifications」として挙げられています。

  1. 学位(学部卒以上=専攻はなんでもいい) *まだ学部を卒業していなくても応募できるが、入学する年の8月31日までに学位を取得できる必要
  2. 英語能力(英語が母語でない場合はIELTSかTOEFL IBTかCambridgeかCEFRのスコアの提出が必須。最低でも、IELTS: 7.0点以上、TOEFL IBT: 100点以上、Cambridge: 180点以上、CEFR: C1以上、TEM4: "良好"かそれ以上のレベルをパス、CET6: Overall 600点以上などのスコアがないと応募できない)
  3. 優秀な学業成績(Minimum GPA=足切りラインは設定されていない)
  4. 中国に関する学際的研究への強い興味関心
  5. 以下の項目を示す経験:特筆すべき課外活動、コミュニティへの貢献、社会的な活動、リーダーシップ・ポテンシャル

まず、大学時代の学業成績(GPA)は確かに重視されています。応募に際してGPAの最低点が設定されておらず、どんな成績でも応募できますが、実際は「かなり良い大学のかなり良い成績」が期待されていると思います。応募者も多いので結果としてそうなっているのでしょうが、実際多くの奨学生は「かなり良い大学のかなり良い成績」を持っているように感じます。なので、応募を考えているのであれば、どんな授業でも良い成績を取れるように努力して良いGPAを獲得することが重要です。ただ、これはYenching Academyの良いところでもあると思いますが、世界的な有名大学の優秀な学業成績がなければYenching Academyに入ることができないということはありません。実際、奨学生の中には成績が良くない人(例えばGPA3.0以下) やいわゆる有名大学の出身ではない人もいます。

また、Yenching Academyは世界と中国をつなげるとともに中国の多様な側面を学んでもらうことを目的とした中国学(China Studies)の修士プログラムであることから、「中国に関する学際的研究への強い興味関心」は、応募者に要求される非常に重要な要素です。実際、政治や経済、社会などどんな分野を学ぶとしても、Yenching Academyで学ぶことは全て中国に関連している必要があります。そのため、どんなに素晴らしい応募者でも中国に関する興味関心がないのであれば、このプログラムには合わないでしょう。

そして、「特筆すべき課外活動/経験や達成したこと」と「リーダーシップ・ポテンシャル」はYenching Academyのような非常に競争的な全額奨学金プログラムに入るためにはとても重要な要素でしょう。というのも、このようなプログラムには世界中から非常に優秀で多様な応募者からの応募が多く集まるため、それぞれの応募者は「優秀な学業成績」と「中国への興味関心」に加えて、他の要素で自分を他の応募者から差別化する必要があるためです。応募者は、「特筆すべき課外活動/経験や達成したこと」や「リーダーシップ・ポテンシャル」をアピールすることで、学業にはとどまらない「優秀さ」を示すことができるでしょう。逆に言うと、「特筆すべき課外活動/経験や達成したこと」や「リーダーシップ・ポテンシャル」がない、あるいは効果的に伝えられないとYenching Academyに入ることは難しいかもしれません。そのため、もし応募を考えていて本気でYenching Scholarになりたいなら、戦略的にでも何か良い課外活動やリーダーシップ経験になることに挑戦した方がいいと思います。もしYenching Scholarにならないとしても、そのような経験はとても貴重で有意義なものになると思います。

まとめると、Yenching Academyのようなプログラムに合格するには、上で挙げた事柄とその他のいくつかの事柄が重要だと思います。ただ、重要な事柄は必ずしも以下に限られないし、またこの内のいくつかを欠いていても合格することはもちろん有り得ます。

  1. 優秀な学業成績
  2. 中国に関する学際的研究への強い興味関心
  3. ユニークかつ/または特筆すべき課外活動や経験、達成したこと
  4. リーダーシップ経験と能力
  5. 中国に多少なりとも関連した将来の目標や野望
  6. 応募書類を説得力と魅力のある良いものに仕上げる力
  7. 多様な人とのネットワーク
  8. 高いコミュニケーション能力
  9. 高い学力/知力
  10. 高い英語能力
  11. あなたを選びたいと思わせる何か(情熱、根性、運、魅力、タイミング、相性、将来性、「  」など)

ちなみに、中国でやるとはいえ英語のプログラムなので、中国語の能力はあれば気持ちプラスという程度で実際はほぼ関係ないと思います。

 

4. 各応募書類作成に関するアドバイス

各応募書類を作成するにあたり、ヒントになりそうかなーと思うことを挙げておきます。ただ、成績証明書と学位記あるいは在籍証明書、英語試験のスコアについては、書類作成に関するアドバイスがないのでここでは省略しています。

 

  1. Personal Statement (志望動機書: 750字以内)

志望動機で特に重要なのは、「なぜYenching Academyがあなたの目指すものと重なっているのか」(Why is your goal in line with the Yenching Academy?) ということをわかりやすく説明して、選考者たちに「あなたの目標のためにはYenching Academyが必要だ」と信じこませることでしょう。このポイントが抜けていたり、あなたの目標がプログラムと重なっていないのであれば、合格することは極めて難しいでしょう。なので、どんなにめちゃくちゃ優秀な人でも、プログラムと関連性が全然なければ合格するのは難しいでしょう。なぜ「あなたの目標のためにはYenching Academyが必要だ」と信じこませることがそんなに重要なのかというと、結局このようなプログラムには多くの非常に優秀な人たちが応募します。そして、みんな「このプログラムに行きたい」と言います。だからこそ、ただ自分は行きたいという希望を伝えるだけではなく、じゃあ実際になんで自分がそこに行く必要があるのかということを説得する必要があります。また、Personal Statementを書くときは、ただ単に志望動機を書くのではなく、個人的な経歴をうまく使って志望動機にストーリー性を持たせると良いと思います。750字まで書くことができるので、過去・現在・未来についてわかりやすく大事なポイントを記述しつつ志望動機を仕上げることが重要でしょう。

 

  1. Statement of Research Interest (研究関心表明書: 最長1500単語)

本書類は、2021年度向けの選考から新たに始まった評価項目で、それ以前には、このような応募書類はありませんでした。近年になってやっと対策方法や重視されるポイントなどについて知見が溜まってきました。

まず、本書類はあくまでStatement of Research Interest、つまり研究計画書や提案書ではなく、あくまで「研究関心」の表明です。そのため、どのようなことを研究してみたいかということをはっきり表明することが第一の目的となります。一方、Personal StatementのポイントはIntroduction of yourself。つまり、これとStatement of Research Interestの双方を使って、応募者はPersonal Statementで自分自身(Life story)について説明する一方、自分の学術的な側面について説明することができます。Statement of Research Interestが近年追加されたのは、YCAが応募者の学術的な部分をより重視するようになった証左でもあります。具体的には、応募者が学術的関心をまず有しているか(言い換えればYCAに来てまじめに勉強・研究する気があるのか)、加えて一定程度の能力を有しているのか(=関連の知識があるか、思考・議論ができるか等)、研究分野がYCAに適しているのか等、このような点を探りたいのだと思われます。

自分のPersonalな部分とAcademicな部分を、Personal StatementとStatement of Research Interestで説明できるようになった今、その二つにしっかりとした相乗効果と関連性を持たせることが重要でしょう。つまり、Personal Statementで「あなたはどんな人物で、何をしてきて、今はどこにいて、これから(YCAの先に)何を達成していきたい」を伝えると同時に、Statement of Research Interestでは「(Personal Statementに書いた内容)だからこそ、どういった背景から、何を研究したい。そのためには、何などの方法で研究をしたいと考えている」のように、二つのつながりを意識して書くとより説得的・効果的でしょう。逆にいうと、Personal StatementとStatement of Research Interestに書いている内容の関連性が薄かったり齟齬があったりすると、よくわからない弱い応募書類になってしまうでしょう。

以下、上記背景およびこれまでの応募者の声を踏まえたうえで、研究関心表明書に書くべき・書くとよい内容を列挙してみました。

①興味のある学術分野・トピック、または関心を持つに至った背景

②自身の研究における問いの設定(興味分野・トピックに関連して具体的に何を研究したいか)

③取りうる方法論

④使う文献・データ

⑤使いたいYCAのリソース(教授、授業)

この中で、何よりも優先されるべきは①です。先述のように、本書類は研究関心の表明が主目的であるため、自身の関心をはっきり示すことが重要です。逆に言えば、それ以外の項目がたとえ少し曖昧でも、ここを明確に書いたほうがいいです。もちろん、研究の関心といっても書き方は様々です。研究の関心についてもまだ絞り切れていない応募者も多いかと思いますが、その場合は複数列挙する形でも構わないです。一方で、明確であればあるほどよいので、自身の研究関心について具体的に書くように心掛けるとよいかと思います。絞り込み方は分野によっても違いますが、哲学であれば研究したい思想流派もしくは時代、可能であれば具体的な思想家・哲学者、もしくは研究したいテーマ(倫理、政治、形而上学など)を具体的に書く、経済であればどの分野を研究したいか(マクロ、ミクロ、ビジネスなど)、関心がある産業セクターや事象などの観点から絞り込むことができるかと思います。また、自分がそのテーマに関心をもったきっかけもあれば、書くとよいと思います。特に、Personal Statementを補強できる内容もしくはそこでは書けなかったアピールポイントがあれば、それを書くこともアピールにつながると思います。

②に関しては、①よりはやや優先順位が落ちるものの、自分の学術的な関心を示す上でも重要ですので、ぼんやりした形でも記入するとよいと思います。論文におけるリサーチ・クエスチョンのような形で書くのが最も理想的ですが、そうでない場合は自分自身が気になることを質問にして、列挙する形でもよいと思います。

③は、難易度が高いことに加え、①と②と比べたら優先順位が下がります。その一方で、自分自身に学術的な関心や情熱があることを示す上で、ぼんやりした形でもよいので、書いておくとよいかと思います。具体的には、定量的な手法か定性的な手法か、定量的な手法を用いる場合は具体的にどのようにデータを入手して、分析を進めるか、定性的な方法であれば何を分析対象とするか(インタビュー結果か文献か)、どのように分析を進めるか(テキストマイニング、文献読解など)、などが書く内容として想定されます。

④は①から③が明確であれば自然と書ける部分だと思います。ここも確定している必要はないですが、可能な限り書いてみるのが重要だと思います。特に、定性的な研究(例:思想の分析)であればどういった文献を対象にしたいか、定量的な研究であればどういったデータが必要か、それが既存のデータか新規獲得が必要なデータかといった視点が重要かと思います。また、自分の学術的な関心を刺激した文献や、研究したいテーマや研究手法を考えるに当たって参考にした文献を取り上げるのもよいかと思います。

⑤はYCAに自分自身をアピールするうえで、実は重要な部分です。YCAは、2年目に論文のアドバイザーをYCAに名前を連ねていない教授にもお願いできること、そしてYCA外でも比較的自由に授業をとれることもあり、研究テーマはかなり自由です。そのため、実際には、必ずしも自分の研究の方向がYCAの教授陣や授業と一致している必要はありません。しかし、それでも自分にとってYCAが必要だというメッセージを出すことは、自分のアピールになると思います。それは、学術的な部分でも例外ではありません。そのため、自分の学術的な関心を追求する上で、YCAがどのように自分に役に立つのか、例えば受けてみたい授業がある、研究のアドバイザーをお願いしたい教授がいる、といったことが書ければよいでしょう。

項目①から⑤すべてに言えることですが、書いた内容は何らかの拘束力を持つわけではないので、現時点で自分が興味を持っていること、やってみたいことを最大限に表現するとよいと思います。YCAに入る段階で関心のある分野や研究テーマがはっきり決まっている人は少ないですし、YCAに入ってからも変わる人がほとんどです。その中で、YCAが見極めたいのはあくまで学術的な関心・情熱を持っているかです。そのため、ぼんやりしてでもいいので自分が考えられる最大限の内容を書くとよいと思います。そういった意味で、①に最も重きを置いたうえで、②~⑤は書ける範囲で書くのが重要かと思います。もちろん、一般的な研究計画書のような研究の筋道がはっきり見えているものが書けているのに越したことはないですが、そうでなくても全く構わないです。また、1500単語まで許されているので、配分を工夫することも重要です。筆者は、①に半分以上を費やしたうえで、それ以外の要素は数文もしくは数行で説明していました。もちろん、正解はないですし、自分の学術的な関心・情熱が最も伝わるような形で書けばよいと思いますが、その際にどのようにYCAにそれをアピールできるかを念頭に入れながら書くとよいと思います。

 

  1. Curriculum Vitae (履歴書)

簡潔にわかりやすくまとめれば良いと思います。基本的には、2ページ以内にするのが良いと思います。CVは、応募要件のうち「特筆すべき課外活動、コミュニティへの貢献、社会的な活動、リーダーシップ・ポテンシャル」のアピールに使えると思いますので、考えられる内容は、

・課外活動(サークル、学生団体など):特に役職経験や受賞経験など(社会的な活動であればどのような貢献をしたかも書くとよいでしょう)

・学業:賞をもらった経験、著名な教授に指導いただいた経験、ゼミでの活動など

・仕事:バイトやインターンシップ(特に長期)で努力した経験・成果を残した経験、(もしあれば)社会人経験など

ここでも自分がどのような点をアピールしたいか、特にPersonal StatementやStatement of Research Interestとの関係で考える必要があります。たとえば、この二つに書いてあることを補強するような経験、もしくは両者で詳しく触れられなかったけど自分のアピールにつながりそうな経験を書くとよいでしょう。

また、YCAはリーダーシップを持つ人を重視する傾向がありますので、リーダーシップ経験を多めに入れておく、もしくは一つの独立した項目として入れておくのも良いかもしれません。ただし、必ずしもすべての人がリーダーシップを理由にとられたわけではないですし、実際の学生をみるとYCAは多様な人を入れるようにしていると感じます。いずれにせよ、自分が何をアピールできるか・したいかを意識した上で、CVも書くとよいでしょう。

 

  1. Two letters of recommendation (推薦書: 2通)

推薦書は、多様でより地位のある人からもらえる方が、そうじゃないよりかは良いと思いますが、必ずしも推薦者の身分では選考されないと思います。自分のことをよく知っている、あるいはちゃんと話せる知り合いなどの中から、中国にあるYenching Academyのプログラムへ推薦書を書いてもらうのに適している人にお願いするのが良いと思います。推薦書を全て集めるのは、推薦者の都合もありけっこう時間がかかるので、可能な限り早く準備を始めるようにした方が良いです。

また、推薦書は内容もとても重要だと思います。推薦者にただ「推薦書をお願いします」と投げただけでは、忙しいこともあり内容はあまり良くないものになってしまう可能性があります。そのため、可能であれば推薦書を書いてもらえるようお願いする際に、どのようなプログラムに応募していて、なおかつその推薦者には自分のどのような点を特に強調して示してほしいかを伝えておくと良いでしょう。それぞれの推薦者に自分の異なる強みや良い所を書いてもらうことで、自分というものをより深く多面的に示すことができ、より良い候補者となれるでしょう。例えば、Yenching Academyの場合は推薦書が二通必要なので、一通目は自分のこれまでの経験やすごさ/ユニークさについて、二通目は自分の中国に関する活動や目標、情熱などについて、などというようにうまく使い分けることで、推薦書を通してもより効果的に自分を売り込めるでしょう。

推薦書の長さ的には、短すぎず長すぎず500字程度がちょうど良いのではないでしょうか。

ちなみに、推薦書を出せる人は、現在では、"from associate professors or professors only"になったそうです。つまり、推薦書を書けるのは教授のみで、自分のとき(2018年)にできたような他の人(NGOや国際機関の代表、外交官など)は受け付けなくなったようです。そうなると、基本的には自分が親しいゼミか何かの教授と、それに加えて何かしらのつながりのある教授からもらうしかできなくなってしまいそうです。その場合、(著名な教授とつながりのある人を除いて)推薦書で他の応募者と差別化をするのはけっこう難しくなったような気がします。それならば、せめて質の高い推薦書を書いてもらえるようにした方がいいかもしれません。

 

5. ぜひ応募してください!

Yenching Academyは中国関係のプログラムとして重要な隣国である日本の学生も必要にしているにもかかわらず、これまでのところ日本人学生が必ずしも多くないという現状があります。だからといって、別に日本人の選考が有利に進む訳ではないと思います(笑)。 ただ、日本にとっても重要な隣国である中国で世界中の人々と学べるこのようなプログラムに日本人学生も食い込んで頑張るのは非常に重要だと思います。例えば、日本が中国外交や中国ビジネスをするとき、日本は中国だけではなく、他の国とも協力したり、交渉したりすることがあるでしょう。そのため、対中国〜をするにあたっては、中国だけではなく世界とのネットワークも重要だと思います。これはつまり、世界が対中国〜をするにあたっても、日本とのネットワークが重要だということを意味します。したがって、これまでのところYenching Academyに日本人学生が少ないというのは残念なことだと思います。

現状、Yenching Academyに日本人学生が少ない理由は主に三つあると思います。

一つ目は、そもそも文系の修士や中国あるいは中国への進学に興味のある人が少ない

二つ目は、そもそもこのようなプログラムが日本人にあまり知られておらず、応募者が少ない

三つ目は、応募したとしてもプログラムの厳しい選考を勝ち抜けない

一つ目の理由は日本人に特に特徴的で、なかなか変わらないかもしれません。一方で、三つ目の理由については、ただただ切磋琢磨するしかないと思いますが、二つ目の理由については、プログラムが知られていないだけなので、もっと色々な日本人に知られれば挑戦する人も少しは増えるかなと思います。確かに選考は厳しいですが、挑戦しないと何も始まらないし、挑戦しても何も失うものはないので、是非応募してみると良いと思います!

 

6. 最後に 

この厳しい書類選考を通過すると、セミファイナリストとして面接に進むことになります。面接は、北京にいる場合は直接北京で行い、北京にいない場合はスカイプで行う、という風になります。そこで、北京大学の教授などと英語で面接をすることになります。面接自体は20分程度ととても短いですが、様々な質問に答えなければなりません。

でも、中国やアジア、世界に興味のある人にとっては本当に最高のプログラムだと思うので、ぜひ書類選考の先の面接や、その先のYenching Scholarとしての生活、将来の挑戦とキャリアを目指して、頑張ってください!

北京の夜景




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