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なぜ中国に留学するのか、なぜ中国を学ぶのか

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なぜ中国で学ぶのか、なぜ中国を学ぶのか

 

 

 

北京大学大学院燕京学堂 日本向け説明会のお知らせ(2023/9/9(土)21:00-22:00)】

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(記事のはじまり)

わたしは中国の大学院に進学するのですが、日本の友達などに言うと「なんで中国?」と驚かれることがあります。日本では、海外進学というと基本的に欧米の学校ばかりを考えるからかもしれません。ただ、実際に中国で半年間留学したことがあると共に中国の台頭をできる限り客観的に観ているつもりのわたしからすると、中国留学に行くことに驚かれることに少し驚きます。笑 驚くというか、「あの中国に行くんだから別に驚くようなことではないよね?」みたいな感覚です。実際、近年中国の影響力が益々強くなるにつれて中国で学ぶ留学生数も増えており、中国は今やあのイギリスさえも押さえて世界で二番目に人気の留学先となっているためです。

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留学生受け入れ数ランキング | 参照: https://en.wikipedia.org/wiki/International_student

確かに、中国は新興の大国だし、イメージ的にはその大学の学位や修士などはまだ必ずしも国際的にはあまり評価されないかもしれません。しかし、中国のいまとこれからを考えれば、中国で学ぶことは非常に重要かつ貴重な経験になると思います。

そこで今回は、「なぜ中国で学ぶのか、なぜ中国を学ぶのか」について書いてみたいと思います。

1. なぜ中国なのか

1.1 中国の国際社会における台頭

中国で学ぶ人や中国を学ぶ人が増えた最も大きな要因は、中国の国際社会における凄まじい台頭でしょう。戦後、中国は政治経済社会的に長く不安定な状況にありました。しかし、鄧小平によって1978年から始まった改革開放政策によって、中国は驚異的な経済成長を遂げてきました。約30年もの間、毎年約10%もの経済成長を続け、1978年には1500億米ドルしかなかったGDPが2012年には約55倍の8兆2270億ドルまで増加しました。その結果、2010年には中国のGDPが日本のGDPを抜かし、世界二位となりました。また、様々なGDP予想で、2030年までには中国のGDPアメリカのGDPをも抜かし世界一位になると考えられています。

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中国のGDP/経済成長の推移 | 参照: https://hbr.org/2013/11/chinas-economy-in-six-charts

経済の成長に伴い、中国は軍事費も増大させてきました。上の経済成長の図と同じような凄まじい増加の仕方です。その結果、中国は2017年に約25兆円(2280億米ドル)を軍事費に費やしており、世界軍事費ランキングでも二位になっています。ちなみに、日本の軍事費は5兆円程度(454億米ドル)なので、中国の軍事費の方が5倍くらい多いです。ただ、アメリカの軍事費は約67兆円もあるので、中国の軍事費はまだそれの40%程度です。

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軍事費支出トップ15の国々 | 参照: https://twitter.com/SIPRIorg/status/991527840297443328

 また、日本がこれまで世界二位の規模で支出していた国連分担金も2019~21年の予算では中国に抜かされます。中国の分担割合は大幅に増加する一方で、日本の割合は経済の低成長を背景に低下するためです。中国の分担割合はこれからも続く経済の台頭で増加することが予想されるので、それに伴って中国の国連における影響力も増加するでしょう。

この他にも、中国の台頭に関連する要素は沢山あると思いますが、なんでもかんでもありすぎるのでこのくらいにしておきます。笑

とにかく、中国は世界の様々な分野で急速に台頭していて、中国の国際的影響力や重要度も世界トップレベルへと益々増大しています。

1.2 中国の台頭に伴う国際社会と中国の摩擦と協調の増加

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国際社会と中国の摩擦と協調

中国の国際的影響力が増大することに伴い、国際社会は中国と様々な摩擦や協調を経験してきました。例えば、2018年8月現在で特にアツいのは米中貿易戦争です。これには、トランプ政権の特徴だけではなく、中国がアメリカをも追い抜く勢いで躍進してきたことも関係しているでしょう。また、国際社会と中国の摩擦面としては南シナ海東シナ海の問題、台湾問題、中印国境問題、人権問題などがあります。一方で、協調面としてはパリ協定や一帯一路(国によっては摩擦と見る国も有り)、北朝鮮問題(協調とみない考えも有り)、BRICS、中国アフリカ協力フォーラム、上海協力機構G20ASEAN+中国などを含めた近隣諸国の協力、RCEPなど各種自由貿易協定の模索など様々です。このように、中国の台頭に伴い中国と世界の関係がより重要かつ複雑なものになっています

今ある協調はより良いものにして相互繁栄を目指し、摩擦や問題はむしろお互いについて学び解決策を模索する良い機会として平和を目指すのが大事なのではないでしょうか。

1.3 中国は近現代史上初の「非欧米スーパーパワー」

近現代史上、強大な経済力や軍事力で世界中の政治経済や秩序に大きな影響を及ぼしてきた「スーパーパワー=超大国」は全て欧米の国でした。第二次世界大戦以前の大英帝国に始まり、戦後はアメリカとソビエト連邦が冷戦の二極として対立し、冷戦終結後から現在まではアメリカが唯一のスーパーパワーとされています。どの国も、基本的には白人とキリスト教の影響力が強い国で、そのような意味では比較的似ているスーパーパワーでした(ソ連は政治体制が異なりますが)。しかし、中長期的に世界一の経済力と軍事力を獲得して新たなスーパーパワーになろうとしている中国は、近現代史上のスーパーパワーとはまるで違います。中国は漢民族を中心とした多民族アジア人国家であり、考え方的には儒教道教、仏教の影響が強いとされています。また、政治経済体制も共産主義と資本主義の混合型というような、現代世界の中でも特殊な体制をとっています。歴史的にも、中国は中華文明として独自の長い歴史を持っています。

このような国がスーパーパワーとなり、世界の政治経済と秩序に大きな影響を及ぼすようになると、世界はどうなるのか?スーパーパワーとしての中国は一体どのように考えどのように動くのか。あるいは、中国がスーパーパワーになる前に、覇権を巡ってアメリカと中国との衝突はあり得るのか(権力移行論=Power Transition Theory)?

いまとこれから、我々の国と世界に良くも悪くも大きく影響するであろう国は、近現代史上初の非欧米スーパーパワーで、今までのスーパーパワーとは違うある意味異質でよくわからない国なのです。ということは、中国のことを好きでも嫌いでも、世界は中国をしっかりと理解するように努める必要があるのではないでしょうか。

1.4 中国の教育レベルの向上

イメージ上の国際評価はまだあまり高い印象がないですが、実際に世界大学ランキングなどを見てみると、中国の大学のランキングは明らかにどんどん良くなっています。例えば、Times Higher Education(THE)の世界大学ランキング2018によると、中国のツートップとされる北京大学清華大学はそれぞれ、世界27位と世界30位です。日本の最高峰である東京大学は世界46位なので、いまでは中国の大学の方がランキング的には東大よりも上です(ランキングによっては東大の方が上の場合もあります)。また、THEアジア大学ランキング2018を見てみても、北京大学はアジア3位、清華大学はアジア2位となっています(東大はアジア8位、京大はアジア11位)。

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THEアジア大学ランキングトップ20校の内、7校が中国の一方、日本は2校のみ... | 参照: https://japanuniversityrankings.jp/topics/00037/

また、北京大学清華大学のような中国で最も有名な大学以外の大学も、どんどん国際評価が上がっています。例えば、Academic Ranking of World Universities(ARWU)の世界大学ランキング2018によると、世界トップ500大学に中国からは62校もランクインしており、これはアメリカに次ぐ世界2番目の多さです。そのうち、3校は世界トップ100大学にもランクインしています。ちなみに、日本からは16校しか世界トップ500大学にランクインしていませんが、ARWUでは東大と京大は中国の大学よりもまだ上につけています。

このように、中国の大学はイメージ的には必ずしもまだ国際評価が高くない印象がありますが、各種世界大学ランキング的には中国の教育の国際評価はどんどん向上しているようです。

1.5 欧米の大学と中国の大学で学ぶ中国の差 

わたしは中国について学びたいと思ったときに、アイビーリーグのような欧米の「世界トップレベルの大学」に行くか、国際的評価はまだ微妙かもしれないけど中国の大学に行くかで悩みました。そして、結果としてわたしは中国の大学院に行くことになったのですが、それは欧米で学ぶ中国と中国で学ぶ中国の間には差異があると思ったためです。というのも、わたしは学部時代にアメリカと中国にそれぞれ1年と半年ずつ留学したことがあり、その結果、中国で学ぶ中国の方がもっと興味深く、意義があると感じました。確かに、中国の外から見たほうが客観的に見える点もあるかもしれないので、欧米の大学で中国について学ぶのも良いと思います。でも、基本的に西側と同様な視点から中国を見る日本人としては現地で中国という特異な国家を学んだ方が見えることも多いと思います。それに、外からの視点は別に中国にいてもオンラインや本などで学ぶことができます。また、欧米の大学では基本的に授業の中でしか中国について学べないでしょう。中国系の友達もできるかもしれませんが、海外にいる中国人はより国際的な考え方を持っている場合が多いので、より中国的な考え方は理解しづらいでしょう。しかし、中国にいれば授業だけではなく、友達や日々の生活などあらゆる場面を通じて中国への理解を深めることができます。中国は「異なる変な国」(欧米的な視点の国にとって)だからこそ、現地で学ぶことに大きな価値があると思います。百聞は一見に如かずともいうように、よりリアルな中国が理解したいのであれば、欧米で聞いてばかりいるのではなく、実際に中国で見て聞いて感じることがベストでしょう。

1.6 日本の政治経済社会に対する中国の多大な影響力

中国の動向は日本の政治経済社会に大きく影響しています。例えば政治的な側面では、日本は近年軍事費を増加していて2016年に初めて予算が5兆円を超えましたが、これには中国の軍事的台頭やそれにより緊張が増している東シナ海南シナ海の問題が大きく関わっているでしょう。もちろん、北朝鮮の行動も影響していますが、日本が面している北朝鮮問題にも中国が大きな影響力を持っているとされています。その他にも、沖縄の基地問題、日本の政治経済的国際戦略、日本国内の政治状況(どのような政党/政策が支持されるのかなど)、国連における日本の地位向上、歴史問題など、様々な問題の中に中国が重要な要素として存在しています。

また、経済的側面では、中国は日本にとって非常に重要な貿易相手国です。2017年の統計によると、中国は日本の輸入総額の内の24.4%を占め、二位のアメリカ(10.7%)に大差をつけてダントツ一位となっています。日本の輸出総額を見ても、中国は19%を占め、アメリカ(19.4%)と共にほぼ同率一位の貿易相手国です。つまり、日本が世界から買うものの4分の1が中国から来ていて、日本が世界に売るものの5分の1が中国に行っていることになります。

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日本の輸出入相手国トップ3 | 参照: http://www.jftc.or.jp/kids/kids_news/japan/country.html

また、「爆買い」で有名となったように、日本には中国から沢山の観光客が毎年押し寄せ、多額の消費をしています。日本政府観光局(JNTO)と観光庁によると、2017年には735.6万人(国別一位=全体の25%)もの中国人観光客が日本を訪れ、1兆6946億円(国別一位=全体の38.4%)ものお金を使っています。

あと社会的には、例えば、2017年に日本にいた全留学生26万7000人の内、中国人が10万7000人(国別一位=全体の40%)も占めていました。また、2017年に日本にいた全外国人238万人の内、中国人が70万人(国別一位=全体の30%)を占めていました。

このように、中国は日本の政治や経済、社会などに多様な側面から深く関わっており、良くも悪くも非常に重要な国だと言えます。

1.7 アジアの台頭

これからはアジアの国々の経済が世界で非常に重要になると様々な統計で予想されています。例えば、世界銀行(World Bank)の統計によると、2017年の時点で、世界全体の名目GDPに占めるアジアの名目GDP(オーストラリア、ニュージーランド、ロシアを含める)の割合はほぼ40%もありました。

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世界経済(GDP)の分布状況 | 参照: http://www.visualcapitalist.com/74-trillion-global-economy-one-chart/

また、プライスウォーターハウスクーパーズ(PwC)のレポートによると、2030年には世界トップ5のGDP(購買力平価)を持つ国の内、4カ国がアジアの国だと予想されています。上から順に中国、アメリカ、インド、日本、インドネシアです。世界トップ30まで見てみると、実に半分の15もの国がアジアの国だと予想されています。さらに、2050年にはインドもアメリカのGDP(購買力平価)を抜いて、世界二位になるとされています。

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2014年/2030年/2050年のGDP(購買力平価)予測 | 参照: https://www.pwc.com/jp/ja/press-room/world-in-2050-150227.html

このように、アジアの国々はこれから中長期的に世界において非常に重要になると考えられます。そして、中国はその中心にあります。

アジアは地理的にも非常に広く、それぞれ多様な政治経済社会状況を有しています。そのため、中国というアジアでアジア人やアジアに関心のある人たちと学ぶことはとても有益な経験となるでしょう。

2. 「中国で学ぶ」の現状

上記のような中国で学ぶ様々な要因から、実際に近年、留学先としての中国の人気もどんどん上がっています。中国で学ぶ留学生の数は、2002年に85000人だけでしたが、2017年には489200人まで増加しています。実に、約576%もの増加です。その結果、中国は今や世界で二番目に受け入れ留学生数が多い国となっています。

そのような中で、世界中の優秀な学生を中国に集めるための大規模な奨学金プログラムも始まっています。その筆頭が、北京大学のYenching Academy(燕京学堂)と清華大学のSchwarzman Scholarsです。どちらも英語で1年間行われる修士プログラムで、学費から生活費まで手厚い全額奨学金が支給されます。どちらのプログラムも、2014年に始まったばかりですが、応募者数も毎年すごい勢いで伸びており、今では100人少しの奨学生の枠に世界中から4000以上の応募が集まっています。

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北京大学清華大学の全額奨学金修士プログラム

その他にも、中国に関連する奨学金で有名なものには、中国政府奨学金や百賢教育基金会、キャンパスアジアプログラム(東大や早稲田、北京大など)などもあります。

このように、世界のトレンド的には「中国で学ぶ」が益々人気なものとなっています。ただ、日本から中国に留学する学生数は必ずしも多くないため、日本人留学生の中国国内における存在感もあまり高くないと感じます。例えば、Yenching AcademyやSchwarzman Scholarsのようなプログラムだと、日本人学生は国の規模の割には特に少ないように感じます。

*Yenching AcademyとSchwarzman Scholarsについては他の記事で詳細にまとめます

3. まとめ

長くなりましたが、「中国で学ぶ、中国を学ぶ」の背景や現状などはいかがでしたか?

中国は良くも悪くも非常に不思議で特殊な国です。中国への留学生が増える要因として中国があらゆる側面で台頭してスーパーパワーへの道を邁進していることを挙げましたが、一方で広大な中国国内にはまだまだ非常に貧しい地域もあります。つまり、中国は先進国(新興国)としての一面と発展途上国としての一面の両方を備えているのです。また、共産主義と資本主義の混合型という特殊な体制をとっている上、情報もあまり公に透明化されていないので、中国は本当に色々と謎な国です。

ただ、そのような国が政治経済的にアメリカをも追い抜くような勢いで躍進し、世界や日本に様々な大きな影響を及ぼそうとしていることも事実です。日本と中国は隣国として歴史的に様々な問題を抱えているため、両国間の関係は必ずしも良くありません。しかし、好きとか嫌いとか関係なしに中国は日本と世界にとって非常に重要な国になります。このようなことから、Yenching AcademyやSchwarzman Scholarsのような大規模プロジェクトも始まっているのだと思います。隣国としてなおさら中国を理解する必要がある日本から、中国と世界中の仲間と共に学び、つながり、良い変化の実現へ挑戦する人がもっと出てくることが重要だと思います。

 

次回は、「中国で学ぶ、中国を学ぶ」ためには最高のプログラムの一つである、清華大学のSchwarzman Scholars(シュワルツマン・スカラーズ)についてまとめます。Schwarzman Scholarsは英語を用いて1年間で修士が取れる全額奨学金修士プログラムです。

清華大学Schwarzman Scholarsのホームページはこちら:

https://www.schwarzmanscholars.org

ちなみに、2019年9月入学の応募締め切りは来月2018年9月27日に迫っています!

[追記!!]

 

★Schwarzman Scholarsは一体どのようなプログラムなのかについてまとめました:

kazukiearth.hatenadiary.jp

[追記!!]

★Schwarzman Scholarsへの応募に必要な情報やアドバイスをまとめました:

kazukiearth.hatenadiary.jp

[追記!!]

「中国で学ぶ、中国を学ぶ」ためにもう一つの最高のプログラムである、北京大学燕京学堂(Yenching Academy=イェンチン・アカデミー)についてもまとめました!Yenching Academyも英語を用いて修士が取れる全額奨学金修士プログラムです。

北京大学Yenching Academyのホームページはこちら:

http://www.yenchingacademy.org

ちなみに、2019年9月入学の応募締め切りは2018年12月7日に迫っています!

★Yenching Academyは一体どのようなプログラムなのかについてまとめました:

kazukiearth.hatenadiary.jp

★Yenching Academyへの応募に必要な情報やアドバイスをまとめました:

kazukiearth.hatenadiary.jp

 

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謎の大国 中国はいったいどこに向かっているのか

 

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